2010年 06月 18日
「一泊二日」・・・女医さんの場合 |
もう一人、短い出会いでしたが、
印象的な人がいました。
彼女は女医さんでした。
彼女も気丈な人でした。
やはり、カーテンは閉めず、自己紹介してくれました。
「内科医なので、専門分野ではないんですが、
医者として、自分の身体の中で起こったことは冷静に理解しています。
流産は誰にでも起こりうることなので、私は全然平気です。
どうぞ、私に気を使わないでくださいね。」
さすが、女医さん。
かっこいいな~と、その時の私は感心していました。
前日の処置が終わって戻ってきた時、
少し口数が減ったかなとも思いましたが、
彼女の凛としたイメージは変わりませんでした。
次の日の朝、手術の前には私たちにニッコリ笑って「行ってきます!」と言葉を残して軽やかに病室を後にしました。
残った私たちは、「いや~、さすが、女医さんは違うね。」と話していたのですが、
彼女が戻ってきた時、私たちは一斉に自分たちのカーテンを音を立てて閉めたのでした。
キャスターベッドの上で暴れ、叫びながら彼女は病室に戻ってきたのです。
ドクターとナースで彼女を抑えつけながら、
ベッドに移動させる様子が、カーテン越しに分かりました。
麻酔がきいていて、意識が朦朧としたときに、
彼女の内なる叫びが表に出たのでしょう。
彼女の口からは、さっきまでお腹の中にいた赤ちゃんへの未練の言葉が、
私たちの病室に氷が裂ける音のように響き渡りました。
私たちは、ただ、カーテンを固く閉め、
その叫びが、やがて寝息に変わるのをじっと待つのみでした。
その後、意識がはっきりした彼女は、
無意識の中、自分がどんな状態だったのか、
全く覚えていないようでした。
もちろん、私たちも何事もなかったかのように接しました。
先の美しい女性とこの女医さんは、
入院の時も退院の時も一人でした。
頑張る彼女たちのことが、なぜかいまだに一番気になるのです。
by aserenityprayer
| 2010-06-18 11:57
| 【命】次男の誕生にまつわるお話