2010年 06月 05日
日本で初めての手術 |
もう一つ、
私を追い込むものがありました。
それはドクターからの「日本で初めての手術をしたい。そのためのチームを組んだ。」という言葉でした。
入院して初めての内診で、
カーテンの向こうで複数の人間がいる気配を感じていました。
主治医が何やらその複数の人間に説明しているようでした。
後からわかったことですが、
カーテンの向こうにいた複数の人間は、
私の手術のために組まれたチームのメンバーだったのです。
だったらせめて、
先に説明をして、私の了解をとってからメンバーを内診室に入れて欲しかったと、
なにやら自分がモルモットになったようで、とても不快に感じました。
けれど、もうこの頃には病院で感じる様々な不快さももう、慣れっこになっていました。
入院中に心音をとりに来たナースが、
「双子ちゃんですよね~」
とニコニコして病室に入ってきて、
一人の子の心音を確認し、
「は~い♪ 元気ですね♪」と言った後、
もう一人の子の上で何度も何度も心音をとろうとして首をかしげるので、
しぶしぶ私が「その子は亡くなってます。」と教えてあげなければならないと言うこともありました。
さて、肝心の「日本で初めての手術」です。
元気な方の子が生命の危機に瀕したり、
多重障害を持って生まれてくる可能性が高いのは、
すべて亡くなった子が影響するからです。
もともと、胎盤が一つの一卵性の双子の片方がある程度の週数に達して亡くなった場合、
残った方の子もなんらかの脳障害を主とした障害がある可能性が極めて高く、
それは一児が亡くなった段階ですでに胎盤やへその緒を通して、
血液の流出などによって引き起こされます。
なので、私の場合、その時もうすでに何か異常があるのなら、起こっていたはずでした。
その段階で目に見えた異常はなかったのですが、
いつ異常がおこるかわからない。
だから、繋がっている二人のへその緒にスポンジを入れて、
二人の血液の流出をせき止める手術をしたいという主治医からの申し出でした。
「日本で初めて」という手術への恐怖とともに、
私にはその手術の必要性が本当にあるのかどうかが大きな疑問でした。
ここは大学病院なので、
私は飛んで火に入る夏の虫。
体の良いモルモットなのではないか?
「日本で初めての手術」とやらを、このドクターは成功させたいだけなのではないか?
ドクターの顔が、
急に獲物を捕えて逃さないハンターのように見えてきました。
(出たい。出たい。なんとかしてこの病院から出たい・・・・。)
by aserenityprayer
| 2010-06-05 09:16
| 【命】次男の誕生にまつわるお話