2010年 06月 04日
となりの部屋からの慟哭 |
自分のお腹の中で、一人は亡くなり、もう一人も生命の危機に瀕していると言う状況は、
到底私一人で処理できるものではありませんでした。
けれどその時、だれもがパニック状態で、
私の心に寄り添ってくれる人は家族の中に一人もいませんでした。
究極の状況を言い渡された時、ただ一人、冷静に事実を受け止め、
すべてを投げ打ってでも力になると覚悟を決めていたのは、今は亡き私の父だけでした。
父は昔の人間で、私の前では一切その思いをあらわさかかったので、
父だけがこの時の私と同じ考えだったということを知ったのは随分後のことでしたが・・・・・。
その当時、生き場のない思いを一心に受け入れてくれたのが幼い長男でした。
無邪気に母を求めて毎日会いに来てくれる長男が、私の心の支えだったのです。
一度は母であることを放棄しかけた瞬間もあった情けない私。
そんな母をも慕う長男の存在が私を生かし続け、
困難に立ち向かう勇気と力を与え続けてくれました。
入院の際、他の出産を待つ妊婦さんとの同室は耐えられないと、個室を希望しました。
希望がかなって個室での入院生活が始まりました。
気兼ねなく眠れると思っていたのもつかの間、
毎晩のように隣の個室からの慟哭の泣き声が聞こえてきます。
そのたび、ナースのたしなめる声が聞こえます。
「いつまでもくよくよしていても仕方ないのよ。
気持ちを切り替えてなんとかになくちゃ、あなた、ここから出ることもできないのよ!」
扉が開けっぱなしになっていた彼女の病室の前を通った時も、
彼女はナースに叱責されていました。
ちらりと見た彼女のすっかり生を失った姿は、13年経った今でも忘れることはできません。
一瞬にして感じました。
彼女は悲しみの人工的なお産のダメージから心身ともに本来の姿を失っていることを・・・・。
「こんなことじゃ、いつまでたっても家に帰れないのよ。
しっかりして!ちゃんとご飯食べて!」
そんなナースの言葉にも、彼女は無反応でした。。。。。
家族がパニックになっている状況、
隣の部屋からの慟哭と叱責、
「しっかりしなければ」と、
私はますます自分を追い込んでいったのです。
by aserenityprayer
| 2010-06-04 07:04
| 【命】次男の誕生にまつわるお話