2010年 06月 01日
失った「生」への力を取り戻す時 |
東京の朝、ラッシュの時間帯で人身事故が起こると
「迷惑だな・・・」と思うほど、私たちは人の命が自ら絶たれることに慣れ切ってしまっています。
もしかしたら、自ら命を絶つ人は「死にたい」と積極的に思うのではなく、
生きる力を根こそぎ奪われていて、
生きることをすっかり諦めているのかもしれないと、
あの時の自分を振り返って思うのです。
それほどまでに
瞬間的に私は生を失っていました。
その時です。
母親から「生」が消えたことを感じてか、さっきまで無邪気に遊んでいた長男が
心配そうな顔で私のところに寄ってきました。
「お母さん、なんで泣いてるの?」
「あのね、お母さんのお腹の中に赤ちゃんがふた~りいたでしょ?」
「うん。あかちゃん、ふた~り。」
「でもね、一人がお腹の中で死んじゃったの。
だから、もう会えないの。
○○、赤ちゃんに会うの楽しみにしてたのにね。ごめんね。」
「ふ~ん・・・・。ひとり、死んだの?もう会えないの?」
「そうよ。もう会えないの。」
少し考えてから、長男は私に聞きました。
「もうひとりは?」
「え?」
「あかちゃん、ふた~りでしょ?ひとりは死んだけど、もうひとりは?」
その時です。
お腹の子が私の右のわき腹近くを力強く蹴りました。
その力があまりにも強く、私は思わず「痛い!」と声をあげてしまいました。
そのあともボコボコボコと、続いて蹴るのです。
お腹の子の力強い生命力のメッセージを身体中で受け止めた時、
私の奥底から、
「生」が蘇ってくるのが自分でもはっきりとわかりました。
今、蹴られているそのお腹のあたりから、じわじわと「生気」と言う名のエネルギーが湧きだし、
身体全体にその温かさが伝わり、それが頭にまで届いたとき、
我に返った私は長男を見て言いました。
「生きてるよ。一人は死んじゃったけど、もう一人は生きてるよ。」
「ふ~ん。じゃあ、会える?」
私は長男をしっかりと見て言いました。
「会えるよ。」
さっきまで不安そうに私の顔を覗き込んでいた長男が、
満面の笑みを浮かべて私を見ました。
そしてくるっと踵を返し、またトーマス遊びに少し先の廊下に走っていったのです。
失った「生気」をこの奇跡の様な出来事ですっかり取り戻した私は、
この時、猛烈に心と体にエネルギーが充満したことを感じ、
こう誓いました。
「絶対に、負けない!
絶対に、死なない!
絶対に、一人残ったこの子を元気に産んでみせる!」
by aserenityprayer
| 2010-06-01 07:43
| 【命】次男の誕生にまつわるお話