2010年 05月 29日
子どもの死、その宣告の時 |
二月に入るとまもなく28週、妊娠8カ月に入るので、
一月末には大阪の実家へ帰る予定でした。
大事をとって年末年始は大阪には帰らなかったので、
母が弾む声で電話をしてきます。
「もしかしたらまだ肌寒い時に生まれてくるかもしれないから、
春夏用の肌着の他に、少し分厚い肌着も二枚ずつ用意したからね。
とても肌触りが良くて、素材も安心なガーゼの可愛いバスタオルがあったから、
それも一人2枚ずつ、4枚買ったよ。
ベビーベッドは一台あるから、もう一台はレンタルでいいよね?
お布団はもうワンセット注文したからね。」
自分の臨月の様な大きなお腹を見ていると、
まだまだ先とわかっていながらも、
母のこの気の早い準備の仕方を穏やかな気持ちで受け入れられました。
里帰り前の最後の東京での検診に向かったのは
一月半ば。
妊娠7カ月、24週に入っていました。
長男が大好きだったトーマスのおもちゃを何台も携えて、
病院に向かいました。
病院に着いたのが午前10時ごろ。
その日は特別に混んでいて、診察室に呼ばれたのが午後3時を回っていました。
もちろん、その5時間もの時間を過ごした待合室で、
何度も同じ質問を受けました。
「もうすぐですか?」
そしていつもの通り、少し誇らしげに
「まだ7カ月なんです。双子なので!」と答えたのでした。
母の気の早い準備の様子を聞いたのも影響してか、
この日はドクターに性別を聞こうと心に決めていました。
二人分用意するなら、あらかじめ性別がわかっていた方が色など、
選びやすいと思ったからです。
ようやく名前が呼ばれ、
あの温かい空気に包まれた診察室に入りました。
トーマスのおもちゃを抱えた長男も一緒です。
いつものように穏やかな笑顔でドクターは問診します。
「変わりないですか?」
「はい。今日は、性別を教えていただきたいんです。
いろいろ準備するものもあるので・・・」
「そうだね。双子ちゃんだと準備も大変だね。
もう、性別もしっかりとわかるでしょう。いいですよ。」
ベッドに横になってお腹を出し、
(どっちだろう・・・。できれば女の子がいいな・・・。女の子でありますように!)
など、ドキドキしながらドクターの言葉を待っていました。
「あ~、男の子だね。
ほら、ここにおちんちんがあるでしょ?」
超音波のドクターが指さすところを見ると、
確かにおちんちんが見えました。
「ということは、こっちの子も男の子だな!
まず間違いなく一卵性だからね。」
(男の子か・・・・。ってことは、男の子3人のママだ~!)
女の子を切望していたので、
少しがっかりする気持ちをベッドの上で整えていました。
それには少し時間がかかり、
そのあとドクターが休みなくエコーの機械を動かし、
何度も何度もお腹の上を行き来し、
画面を食い入るように見つめていることにそう気を取られることはありませんでした。
私の頭の中はその時
(男の子3人・・・・^^;;)の吹き出しが大きく幅を利かせていたのです。
ドクターが切りだしました。
「こちらの赤ちゃんに関しては、心拍もはっきりしていて、とても元気ですね。
でも、こちらの逆子になっている方の赤ちゃんは、さっきから何回も見てるんですが、
心拍が確認できないんです。」
「ちょっと、お腹しまってこちらに来てもらえますか?」
ナースがさっとベッドに近寄り、
お腹のゼリーを拭いてくれます。
そして服装を整え、ベッドから起こしてくれました。
ドクターのデスクの椅子に座るよう私を促し、長男を見て言いました。
「たくさんトーマス持ってるね~。
看護婦さんに見せてくれる?
ママは先生と大事なお話があるから、あっちで看護婦さんと遊ぼうか~!」
そして、長男をどこかに連れて行きました。
(心拍が確認できない?どういうことだろう。なにか不都合でもあったんだろうか?)
まだまだ私は自分になにが起こっているのかが分かりませんでした。
そんな私にドクターは紙を取り出し、お腹の中の絵を描いて説明し始めました。
「いいですか?
こちら、下にいるのが、元気な方のお子さんです。
そして、こちら、上にいるのが亡くなってる方のお子さんです。」
(亡くなってる????)
ここでやっと「心拍が確認できない」という言葉の意味を
頭で理解しました。
そして、心はまだそこについていけていないのか、
驚くほど静かでした。
ただ、はらはらと、止めどなく次から次へと溢れ出る涙だけが
私の感情を代弁しているかのようでした。
by aserenityprayer
| 2010-05-29 08:50
| 【命】次男の誕生にまつわるお話