2010年 05月 10日
セレブ産院 VS 助産院 |
「○○さま~」
という患者を呼ぶ甘い声。
まるで、ファッションビルの店員の呼び込みのようなトーン。
それが私が持った違和感でした。
今でこそ、病院で患者を「○○様」と呼ぶところも珍しくなくなってきましたが、
当時の私は、自分の耳を疑いました。
この病院では、妊婦さんは「患者」ではなく、「お客さん」なのだと直感で思いました。
決してそれは悪い考えではないと思うし、そうすることで妊婦さんの心の負担が減るのなら、
それは正しいのでしょう。
けれど、私にとっては、なにかスッキリしない思いを抱かせました。
そんな中、私の名前が「様」付けで呼ばれました。
1週間ほど前のことが、少しフラッシュバックし、私の鼓動を速めます。
診察室も待合室に負けず、明るく、清潔で、温かみも感じるところでした。
ドクターの対応もそれはそれはきちんとしていて、先日味わった恐怖を思い出すことはありませんでした。
速やかに、何事もなかったかのように診察は終わりました。
受付で、少しあった違和感も、この頃には薄れていました。
自分が大事にされていることが実感できたからです。
(やっとここで落ち着ける・・・)
そう思ってホッとしている私にドクターは申し訳なさそうに言いました。
「前回は助産院で出産されてるあなたが、どうしてうちの病院を選んだんですか?」
不意をつかれて少し困った私は、それでも笑顔を作り
「出産は里帰りしてまた助産院で産むつもりですが、こちらの病院は家からも近いし、お友達もこちらで産んでいて、いい病院だと聞いたので・・・・・」
と答えました。
少し考えてからドクターが切りだしました。
「うちは、出産の痛みは、お母さんにも赤ちゃんにもストレスがかかり、悪影響があると考えています。
助産院の考えとは対極です。今回も助産院で産むおつもりでしたら、うちではなく、他の病院にあたられた方がいいと思いますよ。」
ドクターの物腰はあくまでも優しく、それでいてきっぱりと私とお腹の子を拒絶したのでした。
今度こそと思っていた私には、また目の前でピシャリと扉を閉ざされた気がして、
ただ、トボトボと足取り重く、家に帰っていくしかありませんでした。
つわりはますますひどくなり、
水の臭いさえも気持ち悪く、まだ幼い長男をトーマスやディズニー映画のビデオでお守させる、
そんな日々が始まりだした10月の初旬のことでした。
by aserenityprayer
| 2010-05-10 08:14
| 【命】次男の誕生にまつわるお話